何もないところからスタート 公園を生活の一部に

「都市を市民のステージに」というビジョンのもと、公共空間施設をつかった様々なイベント企画運営などを行うnest。普段はそれぞれが別の仕事や活動をしているという皆さんが集まり、nestを立ち上げることになったきっかけはなんだったのでしょうか?

ー「2年前に、南池袋公園がリニューアルオープンする際のイベントを手がけることになり、その時に関わったメンバーで立ち上げたのが『nest』です。一度きりのイベントで終わるのではなく、続けていくことが大切なので、無理せず小さくスタートすることからはじめました。僕たちはもともと『としま会議』という、豊島区を楽しくしていこうというイベントを企画していて、地元で活躍する人たちはたくさん知っていたので、マルシェやトークイベント、音楽の生演奏やヨガなど、いろんな方に協力いただくことで、南池袋公園の未来の日常を表現することができたと思います。その後、定期的にマルシェを開催してきたことで、公園にマルシェがある風景が日常となり、この2年で劇的に公園の使われ方が変わってきたと実感しています」 (青木純さん)

顔の見える存在として 公園を運営する

南池袋公園を訪れた皆さんはご存知かと思いますが、季節を問わず平日でも人がたくさん。オープン時に未来の公園での日常を提案したnestの皆さんですが、公園という場所がすっかり生活の一部に溶け込んでいるのがわかります。こんなにも多くの人に愛される公園での運営の秘訣はなんでしょうか?

ー「顔が見える存在として発信することが大切だと考えています。例えば芝生の管理をするのにも、立て看板で『進入禁止』とだけ情報を伝えるのではなく、フェイスブックや手書きのメッセージボードなどを作って『今は芝を育てる時期なので見守ってください』とメッセージとして伝えたり、利用の仕方もメッセージとして伝えるこことで利用者とコミュニケーションをとることができるんです。管理する側も、使う側も、お互いに顔の見える存在であることが大切だと思っています」(飯石藍さん)

月に一度のマルシェと 年に一度のお祭りでまちを楽しく

南池袋公園とグリーン大通りを会場に毎月開催している『nest marche』。訪れる人はもちろん、出店する側の人にとっても、ここが“市民のステージ”となるように意識しているそうです。

ー「マルシェのある日常をつくりたいと企画しました。毎月開催しているのですが、芝生の養生中は公園の中で利用スペースを変えてみたりと、いろいろ実験しながら行っています。最初は8組の出店者だったのが、今では常時30組ほど。一番多い『IKEBUKURO LIVING LOOP』のときには100組を超える規模にも成長。一度きりのものではなく年間を通して行なっているので、プロモーションにはお金はあまりかけられず、できることは自分たちでやっているんです。例えば学校に生徒数を聞いて、チラシを学校に配布するとか。あとは、地元の企業の皆さんが活動に賛同し、PR等も協力してくださるようになりました。続けてきたことで、今では訪れる人もご近所さんが増えたりと、“オール池袋”という感じで、マルシェが地域に根付いてきたと感じています」(青木純さん)

ー「2年前のオープニングイベントで作成した映像に、けん玉をする親子が映っていたのですが、そのお子さんがなんと世界選手権に出場するほどの腕前!そして今度はワークショップやけん玉販売など出店側としても参加してくれるように。こうやって、参加者の皆さんと手を取り合いながら、マルシェを続けていきたいと思います」(宮田サラさん)

公園で開催される月に一度のマルシェが生活の一部なら、まちに繰り出す『IKEBUKURO LIVING LOOP』は、地域に根ざす “お祭り”のようなものかもしれません。池袋東口グリーン大通りを地域の人のリビングにしようと、昨年よりスタート。ハンモックを並べたくつろげるスペースや、ワークショップ、美味しいフードトラック、マルシェなど、歩いているだけでも楽しいイベントです。今年は5月18日の夕方からスタートする3日間を予定しているそうです。

写真提供:株式会社nest

ー「昨年は、通り過ぎるだけのいつものストリートが、滞在する場所になり、そこにいる皆さんの笑顔で楽しそうな様子が見られてとても嬉しかったです。今年は週末だけでなく、金曜の夕方スタートにしました。豊島区も『アフターザシアター』といって、劇場都市として舞台を観た後も楽しんでもらうという取り組みを提唱しているので、僕らはそれをより具体的にできたらと。いつもの仕事帰りに、ふらっと立ち寄ってほしいと思ったんです。平日の夜の時間の過ごし方を提案したいなと。マルシェもそうなのですが、『IKEBUKURO LIVING LOOP』では、これが特別なこととしてではなく、住んでいる人たち、そしてここで育つ子どもたちにとって日常の風景になるといいなと思っています。僕たちは池袋を中心に活動していますが、豊島区は広くて、地域ごとに個性もあります。僕らの活動をきっかけに、同じような活動をする人が増えてくると、まちはもっと楽しく、もっと面白くなると思うんです。そしてそのためには今後は民間や行政がこれまで以上にタッグを組んでいくことが必要になってくると思います。そして面白い活動が広がれば『わたしらしく、暮らせるまち。』はきっと実現すると。実践あるのみですね。僕らの役割は、これからも活動を続けること、より多くの人に『だったらいいな』の体験をしていただくことで、このまちの可能性を広げていくことだと思っています」(青木純さん)

文:田口みきこ
写真:西野正将