新居(におり)さんが、今取り組んでいる「家族留学」について教えてください。

ー「家族留学」は、今から3年半ほど前、私が大学一年の時に任意団体として発足した「manma」活動の一環です。今の20代〜30代くらいの女性は、「仕事を続けながら家庭を築きたい」という将来像を描きつつも、「それが本当に実現できるのか?」という不安を抱えている人が多いんですよね。そんな時、「仕事」について学びたければ、様々な企業が実施しているOB/OG訪問を行うことができます。それと同じように、「結婚・子育て」について学びたければ、いろんなママのところに話を聞きに行けるといいなと思って。しかも、外で話を聞くのではなく、お家へ行っちゃえばいいじゃんと。

働きながら子育てしているママのところへ「体験訪問」してみるということですね。

ーはい。その人が、何故そういう人生を歩んできたのか、そこでどんな課題を抱えているのか、あるいは、どんな楽しいことがあるのかについて、1日だけ家事・子育てを手伝いながら聞いてくるという。そんなプロジェクトを「家族留学」と銘打って立ち上げたわけです。

「家族留学」を受けてみたいという人は、やはり20代〜30代くらいの女性が多いのでしょうか。

ーそうですね。特に大学3年生くらい、就職活動のタイミングが一番多いです。あとは社会人になって数年目の人……実際に企業に入ってみて、より不安が大きくなったというケースです。やはり多くの悩みは会社、就職、転職に結びついています。であれば、こちらも企業を巻き込んで活動を進めていくべきだと思いまして。現在はソフトバンク様と連携させていただき、ソフトバンクのオフィスを使い、ソフトバンクのワーキングマザーさんにご参加頂き、座談会形式で意見交換をしたり、ソフトバンクの社員さんのご自宅へ「家族留学」させてもらって、その様子を動画で流したり。そうした取り組みを、今後様々な企業と組んで強めていきたいと思っています。

新居さん自身も、そういうことに学生時代から関心があったのですか?

ーそうですね。いざ仕事や結婚、子育てについて考えた時、仕事のキャリアアップについて様々なケースが紹介されていると思うんです。例えばリクナビやマイナビを見れば、「女性の管理職がどんな働き方をしているか?」など、たくさん情報が入ってきます。でも、家族のカタチや結婚・子育てのカタチについては、どこにも情報がないんですよ。そうすると、例えば自分の母はどうだったのかなとか、身近な人に聞く以外に選択肢がない。キャリアの情報に比べてライフの情報が偏ってしまうんです。「いろんな家族のパターンがあって、その中で私はこういう風に仕事を選び、こういう風に結婚して、こんな風に子育てしていくんだ」というふうに考えるチャンスが一切ないんですよね。

やはり、選択肢がたくさんあることが大事なのかなと。「家族留学」という形でいろんな家族のケースを見て、自分の選択肢を増やすことができるのがいいですね。

ーそう思います。「家族留学」も、いろんな家庭のカタチを紹介したいと思っていて。そうすることで「あ、こういう両立のさせ方はいいな」とか、「こういうやり方は、ちょっと自分には合わないな」とか、自分のキャパに合った方法も見えてくる。たくさんの選択肢の中から、自分に合った方法を選びやすくなるのだと思います。

女性の方が、母として、妻として、社会人として、など様々な役割を求められ、しかもそれぞれを「完璧にやらなければ」という風に感じてしまう人が多いような気がするのですが。

ー確かにそうですね。男性で不安を感じている人って少ないですよね。「仕事」の責任は、男女平等に引き受けていると思いますが、「子育て」の責任って、やっぱり女性の方がまだ負担が大きい。そうなると、「仕事も、子育ても」ってなった時に、未来に対する不安が生まれてしまうのでしょうね。

ただ、最近は男性の参加も増えてきていて。やはり、女性がそれだけ大変と言われているのだから、男性側にももちろん責任が来るのは当たり前っていう考え方を持っている人も多くなっているのかなと思いますね。

やはり、「家族留学」に参加する女性は「仕事と子育てを両立させたい」という人が多い?

ーほとんどの人がそうです。ただ、両立ということが目的になるというよりも、「自分自身の人生で、何が一番幸せなのか?」ということが前提としてあって、その上で、社会との接点を持ちながら子供を育てるとか、「精神的な理由」で働きたいという人もいるし、「金銭的な理由」で働きたいという人もいる。そうなった時に、0が専業主婦で、100が仕事だけだとしたら、自分にとってベストなバランスはどこなのかを探しにきているのかなという気がします。

例えば、「ほぼ専業主婦で、仕事はボランティア活動くらいでいいのかも」という結論になる人もいるし、「仕事がすごく大事だから、家事は代行サービスに全て委託すればいい」という結論になる人もいるわけです。

なるほど。一つの「正解」があるわけでなくて、「自分が生きやすいスタイル」を見つけるということですよね。女性の働き方も、昔と今では大きく変わってきているので、やはり親の世代じゃなく「現役の働くママさん」に話を聞く方が有効だと思います。

ーその通りだと思います。

現在はコワーキングスペース「RYOZAN PARK大塚」を拠点に活動しているそうですが、それはなぜ?

ーこのビルの7階に「こそだてビレッジ」という、ママが子連れで働けるコワーキングスペースがあり、子供にフレンドリーな働く場所、生きる場所を作っていこうというコンセプトが気に入って。コンセプトが近い人たちのそばで働くようにしたのは良かったなと思っています。例えば「manma」で子供向けのイベントをやりたいと思った時も、すごくサポートしてくれます。

これまで新居さんは、様々な家族のカタチを見て来られたと思うのですが、幸せそうな家族の共通点ってありますか?

ー家庭がうまく行っているところは皆、「家族はチームだ」と言っているのが印象的です。今の時代、女性も稼げるし、子育ても代行サービスや実家に頼めば夫がいなくてもできる。となると、夫婦で一緒にいる意味ってそんなにないじゃないですか。それでも一緒にいるのは、何かしらの「意思」や「目的」がないといけないなというのは強く思います。例えば、「これから数十年を楽しく生きるために力を合わせているんです」といったような、ざっくりした目的でもいいんです。それがあれば、何か揉めた時なども、その目的を思い出して関係を修復しやすいのかなと。また、夫婦のどちらかがしんどい時は、もう一方がサポートに回ることもできます。目的達成のために、今、家族がどういうバランスでいればいいのかを、家族全員で考えられるのではないでしょうか。

最後に、これからの展望を教えてください。

ー今まで「家族留学」はmanma独自でやっていたので、ある意味「意識の高い子」しか来なかったんですが、最近は岡山大学で単位になるなど、大学と連携したり、先ほどソフトバンクのケースを紹介しましたが、企業と連携したりすることによって、もっと間口が広がるといいなと思っています。普通の就活生、普通の大学生、普通の社会人に、「あ、こんなに選択肢があるのか」「こんなに色んな生き方があるのか」ということに気づいて欲しい。就活の一環として、「家族留学」を活用していただけるようにしたいですね。