まずは古庄(ふるしょう)さんが、オーガニックフラワーショップ『わなびや』をオープンするまでの経緯を教えてください。

ー「農業系の短大を卒業後に花屋へ就職し、そこで8年くらい勤めました。花屋の仕事の中での環境問題への取り組みや、出来ることを考え無農薬の花を調べたところ、無農薬の花というものは存在しないことに気づいたんです。作っている人がいなければ、自分で作るしかない。そう思って花屋を退職し、一旦農業の道に入りました。山梨県の畑で研修したあと東京へ戻ってきて、今の主人のデザイン事務所を手伝い始めるようになり、結婚して1年後にこの『わなびや』をオープンしたんです。
今、子供が2人いるんですけど、当時はまだ上の娘が1歳になったばかりの頃で、結構子育ても大変な時期だったんですけど、主人と話し合ったときに、「きっと今後、オーガニックの花が重要視されるようになってくるから、今その思いがあるなら早いうちに、出来ることから始めた方がいい」と背中を押してもらう形で始めました。」




オーガニックフラワーに興味を持つきっかけは?

ー「子供の頃から「環境問題」が自分の中にテーマとしてあったんです。というのも、小学校6年生くらいの時に、水不足でプールに入れなかった時があって。それがショックだったんですよね。あと、私の兄も環境問題に関心があったので、その影響も大きかったと思います。もちろん、子供の頃に出来ることといえば、電気をこまめに消すとか、洗剤を使わないようにするとかその程度なのですが。」

私は「無農薬・減農薬の植物」というと、野菜など食べるもののことしか頭に浮かばず、観賞用の植物を無農薬・減農薬にするという発想はありませんでした。どんなメリットがあるのでしょうか?

ー「それは、お客様にも一番多く聞かれてきたことでした。まず、花も野菜も同じ土から育てるわけで、花に農薬を使えばそれによって地下水や土壌などが汚染されます。そうすると、いくら野菜を無農薬・減農薬にしていても、めぐりめぐって人体などへの影響は避けられないと思います。それから、お花って皆さん匂いを嗅ぐじゃないですか。お花に顔を埋めて嗅がれる方もいらっしゃいますよね?」


私もよくやります(笑)。

ー「葉っぱや花に付着した農薬は、乾燥すると粉末状になると聞いています。それを直接体内に吸い込む危険もあるんじゃないかと。となると、野菜への農薬は規制しておきながら、観賞用の植物には幾らでも農薬を使用していいという状態はおかしいと思うんですよね。
そして、そんな状況が許されている期間もそう長くないだろうと感じたんです。花屋業界としても出来るだけ早く対応を打っておかないと、急に農薬規制となった時に困る人たちがたくさんいるんじゃないかと。」


確かにそうですね。

ー「日本の文化的行事の中でも、花の果たす役割ってとても大きいので、急に花が不足しても困るわけですね。そのことに気づいた自分から、先ずは動くべきだという。半ば「使命感」にかられたところもありましたね(笑)。ただ、農薬を使うこと自体を完全否定しているわけではありません。使わざるを得ない判断をしなければならない事情が様々あると知り、無農薬を目指す途中の人や、思いを共有できる人なら「減農薬」として扱わせてもらい、応援をしたいと思っていますし、様々な選択を、お客様が選べるということが大切だと考えています。」




現在、『わなびや』さんでは、どんなことをされているのですか?

ー「今は、注文は完全予約制にさせてもらっています。予約をお受けしてから、その御注文内容に適する農家さんを探します。出荷状況を調べた上で、もう一度お客さんに内容を確認してもらう場合もあり、そこで決まったら仕入れをして、ブーケやアレンジメントに仕上げたあと宅急便でお送りしています。」

無農薬・減農薬のお花って、豊富にあるものなのですか?

ー「かなり限られた種類になってしまいます。例えば菊は、農薬を使わないと栽培が難しいといわれていますし、今の季節だとチューリップやラナンキュラスも、減農薬といえるものはあまり市場に出ていない。私はいつも、その農家さんが「MPS認証」を受けている農家さんに当たっているのですが、最近は無農薬・減農薬をやっていても「MPS認証」を降りてしまう農家さんも増えているんです。様々なチェックが入りますから、その対応に手が回らない方もいらっしゃるようなのです。また、ここ数年は震災が相次いだことで、ハウスが倒壊してしまったりして、栽培自体が難しくなっているケースもあるようです。」


色々と課題はあるのですね。ところで、『わなびや』の利用客は、やはり普段から環境問題などに意識の高い人たち?

ー「そうですね。あとは、化学物質に過敏に反応してしまう、という方からのお問い合わせもあります。出産祝いやウェディング用のお花を注文される方もいらっしゃいますね。」


ワークショップも開催されているそうですね。

ー「はい。ここ数年はクリスマスシーズンに4、5回開いているだけなのですが、そこで無農薬、減農薬のお花を使ってリースを作るなどしています。昨年末は、しめ縄・しめ飾りも初めて挑戦しました。「もっとワークショップを沢山やって欲しい」と、知り合いやお客様から要望があったので、そろそろ重い腰を上げて積極的に開催していこうかと思いつつ(笑)。季節が読めない花が多いので、一ヶ月前からワークショップの告知をして準備して……というのが難しいんですよね。」

お子さんお二人を育てながらの働き方に関しては、何か工夫していることはありますか?

ー「花屋の仕事が肉体的にも経済的にもどれだけ大変か?というのは、サラリーマン時代によく分かっていたので、「そんな簡単にはいかないぞ」という覚悟はありました。子供と植物、どちらもないがしろにはしたくないのですが、何かあったらどうしても花が犠牲になってしまいます。それもあって、自宅とショップ、それから主人のデザイン事務所をなるべく近くに構えることにしました。主人も昼夜関係ない仕事だというのは最初から分かっていたので、両方とも自宅と仕事場を一緒にするか、近くにしたいなと。それでこの物件を選んだんですよね。」


なるほど。

ー「以前、農家さんのところに住み込みで働いていて思ったのは、子供はやはり一緒に畑で遊ばせたり、手伝わせたりしながら育てていく方がいいということです。それが本来の姿……と言ったら言い過ぎかもしれないのですが。子供に働く姿を見せるのは大切なのではないかと。子供と一緒にいられて、仕事もできるという環境なら、お互いが何をしているか分かるし、子供の成長を見届ける事もできる。
なので、うちは保育園には預けず、3歳くらいまではここでお店を手伝わせていました。花を叩いて折ってしまったり、バケツを倒したり、子供と一緒だと大変なことも多々あったのですが(笑)、花があると自分から「私、活けてみたい」って言ったり、余った花でブーケを作ってみたり、そういうことを楽しんでいた時期もありました。ここは主人のスタッフが、いつも出入りしているんですよ。そういう人たちに対しても、ちゃんと挨拶できる子に育ちましたね。」


職場と住む場所と子育ての場所が近くにあると、近所づきあいも多くなるし、たくさんの人との関わりの中で育てることができるのは、きっと子供にとってプラスになるかも知れませんね。

ー「すんなり社会へ入っていけるようになるかなと思って期待しています。それに、こういう環境で働き、子育てをしていることで、近所に「仲間」が増えてきたように思います。 ママ友もそうですし、お仕事繋がりも近所で生まれるからやりやすい。特に、娘が小学校に上がった瞬間に一気に繋がったんですよ。それは大きかった。人との結びつきの強さを感じます。」




今後の抱負は?

ー「もっとワークショップを増やしたい(笑)。農家さんのところまで行って、そこでワークショップを開くのも楽しそうですね。あと、もう少し子育てが落ち着いたら、もう一度お店を開けてもいいかなと。無農薬・減農薬で頑張っている農家さんを探して微力ながらサポートしていきたい。それと、私1人が花屋として頑張っていても広がっていかないんですよ。これからは、花屋同士の横の繋がりも大切にしていきたいですね。」


オーガニックフラワーショップ『わなびや』

http://www.wanabiya.com/