世界の家庭料理をつうじて、世界のふつうの人たちを描く

ユーラシア大陸では、日本人ととてもよく似た顔立ちの民族や、日本でも馴染みのある料理と出会った織田さん。それでも、—「バングラデシュのある村では、カレーに魚を入れる。すごいのはその漁の仕方。村の湖の水を全てポンプで汲み取り、湖底に残った魚をみんなで総ざらいするんです」など、日本のルーツを感じながらも驚くような習慣もたくさん目の当たりにしました。

中でも織田さんにとって印象深かったのは、ロシアはウドムルト共和国のブラン村に住む高齢の女性によるアイドルグループです。その名も《ブラン村のおばあちゃんたち》。コンサートの収益で、村に教会を建てようと結成され、今ではロシアの音楽番組に出演するほどの人気ぶりなのだとか。平均年齢60歳、民族衣装をまとい、歌って踊るチャーミングなブラン村のおばあちゃんたちに魅了された織田さんは、ブラン村まで会いに行きました。日本人の来訪は初めてとのことで、盛大に迎えてもらえた、貴重な体験となりました。

織田さんは、漫画のほかにも《世界のおじちゃん(&おばちゃん)》というシリーズでイラストを描き、各地で個展を継続的に開催しています。「怖い」「危ない」といったイメージがある国々にも、人情味あふれる人々の営みがあることを、日本の人に知ってもらいたい。そんな思いで描き続ける織田さんは、—「各国の暮らしや家庭料理から、伝えてくれた人の人生が見えてくる」と言います。

自身の経験を生かして、世界の料理が楽しめるイベントも企画中の織田さん。—「それぞれの国がclosed(閉鎖的)になりがちな昨今ですが、世界の料理を食べて、世界の音楽を聞き、それぞれの国の意外な一面を知るきっかけを作りたい」と意欲的に活動を広げています。


パパ達をエンパワーメントして、自分も楽しむ

働き方を見直し、「父親であることを楽しむ生き方」を広げる父親支援を柱に、様々な事業を展開するファザーリング・ジャパン。「良い父親」ではなく「笑っている父親」を増やすコンセプトに共感した鮫島さんは、地域活動やPTA活動に積極的に参加。—「無理に推し進めるのではなく、楽しい!と思ってやることが大事。その人なりに感じたことを他の誰かに伝えることで、結果的にその地域がよくなっていけばいい」と言います。東日本大震災が起きた2011年3月、ファザーリング・ジャパンの一員として被災地支援に動いた鮫島さん。豊島区でも支援の輪を広げようとしましたが、個人での活動に限界を感じたため、震災の1ヶ月後に《としまファザーズ・ネットワーク》を設立。被災地支援と併せて、豊島区で、パパを楽しむきっかけの普及に取り組み始めました。

子どもと触れ合い、地元と触れ合う生き方を提案するため、保健所や”子ども”家庭支援センターでの講座や、としまF1会議、としま100人社長会にも参画。「パパ目線での地域への提言」を続けています。自身の子どもの成長と共に、《NPO法人コヂカラ・ニッポン》へもジョインし、地域活性化や防災に貢献する活動など、実社会で子どもの力が発揮できる場をコーディネート。大人と子どもの共同事業として取り組んでいます。

次々と取り組みを広げてきた鮫島さん。—「頼まれごとは試されごと。いいなと思ったことはやった方がいい。思いつきをカタチにするために何をするのかを逆算する。それの繰り返しなんです」と言います。今後、コンサルタント業で培ったソフト(人・サービス)における場づくりから、ハード(モノ・場)でも活動の場を広げ、双方からの働きかけによる社会貢献を実現したい鮫島さん。行き着いたのが植木屋、そして公園緑地管理者になるということ。公園管理運営士の資格も取得し、2018年4月からは荒川区立荒川自然公園の園長(統括責任者)を務めています。

「いろんなことをやることで出汁がきいて、より良い味が出せる。ファザーリング・ジャパン的発想でいう “寄せ鍋理論”です」と話す鮫島さん。「パパの社会での知見」を、地域に還元する取り組みのために、唯一無二の鮫島さんの味が利いていきそうです。


独身OLだった私にも優しく住みやすいまち「池袋」

吉祥寺などの人気のまちはどこも家賃が高く、OLが理想のひとり暮らしをかなえるにはほど遠い存在。それに比べて池袋は、駅から徒歩15分のエリアなら手頃な値段の物件に出会えるのだとか。終電で帰宅することも多かった小沢さんは、深夜でも人通りが常にあり、歓楽街であることが、かえって安心だと感じていました。「家を一歩出るだけで、大型書店や映画館に行けるなど、数時間でリフレッシュできるのが池袋に住む良さ」だと小沢さんは言います。

様々な媒体で執筆をしていた小沢さんは、あるとき勧められるままに、自身のブログを書くことにしました。その頃ちょうど話題になっていたのが、東京のまちを紹介するサイトで連載された、OLの恵比寿暮らしを描いた記事。そこで小沢さんは、—「キラキラOLなんてごく一部。池袋を満喫している自分のOL生活を題材にしよう」と考え、その記事をオマージュしたブログ、《真・東京女子図鑑vol.1 28歳OLが選ぶまち「池袋」。脱がなくたって東京砂漠で生きてます》を書きました。結果、通知が鳴り止まないほどの反響があり、2日ほどで10万PV。ライターの小沢さんにとって、大きく飛躍するきっかけとなりました。

「渋谷系、新宿系音楽と並ぶような、“池袋系”のジャンルが確率されていない」と小沢さん。ならば自分が池袋の魅力を発信しようと不動産情報サイトに企画を持ち込むと、編集者の反応も上々。2018年2月に発信されたその記事《独身OLだった私にも優しく住みやすいまち「池袋」》は、またしても瞬く間に拡散されました。—「ガラが悪い、ダサいなど、ネガティブなイメージがあるけど、気負わず出歩ける。アイドルカルチャーがある一方で古典芸能もある。友達と楽しむのも、デートも、ファミリーも、1人歩きも、何をするのも都合がいい。ゾーニングされていないごちゃごちゃ感や、自治体がすごくがんばっているところが大好きだった」と、あふれんばかりの池袋愛がまとめられた記事となっています。

そんな小沢さんが予想もしなかったのが、この記事を読んだ豊島区長から「ぜひお会いしたい」と連絡があり、対談する機会を得たことでした。区長からは、「消滅可能性都市」からの脱却を図るための具体的な施策について聞くことができました。豊島区が新たに掲げたスローガン「わたしらしく、暮らせるまち。」への期待が膨らみ、小沢さんはこれからも、池袋の良さを発信してくれるそうです。


“空間”がつくる新しい書店の可能性

「今の時代の流れ的に、みんなが同じ服を着て、みんなが同じものを見るわけではない。20年間売れずに置き続けている本もあり、そういった、誰が買うねん!っていうタイトルの方が、今の時代にあっているんじゃないかな」と話す工藤さん。日本で出版される書籍は、1日約400~500タイトルで、この数字は世界のトップ3に入る量なのだとか。日々、書店に大量の書籍が自動的に届けられ、返品も可能なことから届いた瞬間に返される書籍もたくさんあるのが、日本の出版業界の現状です。返品率は実に40%にのぼることに危機感を感じる工藤さんは、—「届いたものをただ積むだけではなくて、顧客にどう情報を伝えるかを考え、自分たちが情報を扱っているということに、ちゃんと向き合わなければならない」と考えています。

そんな中、ジュンク堂書店で始めた企画《「ジュンク堂に住んでみる」ツアー》は、Twitterで「ジュンク堂に住みたい」というお客様のつぶやきがきっかけとなりました。応募をかけると、対象人数6人に対して、一晩で6000人の申し込みがあり、工藤さんにとっても驚きでした。—「全く知らない人と、本の前でずっとしゃべれたと、本屋の空間を楽しんでもらえたことが嬉しかった」と言います。

工藤さんは今後、おもしろい本のコンテンツを使ったイベントを企画して、もっと本を主役にした空間を作ることを考えています。これまでも、ジュンク堂書店池袋本店にあるカフェでは、週2回のペースでイベントを開催。特色ある内容にも関わらず、毎回多くの参加者が集まるところに、工藤さんは「書店だからできる企画」の可能性を感じています。

こうした実績を生かして、丸善池袋店ではさらにコミュニティ化を図りたいと考える工藤さん。1階のカフェ《ほんのひととき》には、ビルのオーナーの意向で設置された実物の電車が並び、店舗のトレードマークに。この場所を使って、「書籍」、すなわち、たくさんの「情報」を扱う書店として、様々な人を結びつけることができるよう施策を練っています。本のコンテンツが生きるイベントや、柔軟性のあるコラボレーションを打ち出していく予定だとか。工藤さんが描く、本を買うだけではない書店の未来が楽しみですね。


グローバルとローカルの間に立つ番頭

勤めていた商社を辞めた金子さんは、リノベーションスクールに参加して、シーナと一平の事業プランに出会いました。近隣住人を巻き込みながらシーナと一平のリノベーションが進む中、金子さんはひとりフィリビンのセブ島に渡り、働きながら英語を学ぶプログラムに参加。外国人とコミュニケーションが深められるよう、語学力を磨きました。こうして、シーナと一平は2016年3月にオープンし、金子さんも翌月の4月からジョイン。宿泊客からも好評のしつらえと、宿のオペレーションの維持、管理に務めています。

1階で営むカフェは、曜日によって出店者が入れ替わるスタイル。まちとつながるカフェとして、訪れた近隣住人と宿泊中の外国人の憩いの場となり、宿泊客がカフェで英会話教室を開催したことも。多様な人たちがそれぞれのシチュエーションでカフェの扉を開け、その人から他の人へと関係性が広がることもあり、毎日がとてもドラマチックだと金子さんは言います。宿泊の外国人を観光地へ案内することもあり、一般的な宿泊施設の枠を超えた交流が生まれることがシーナと一平の魅力となっています。

交流を育むのは、宿の中だけにとどまりません。「東京の日常を体験するお宿」がコンセプトのシーナと一平は、椎名町の商店街にあることから、周辺には、惣菜店、パン屋、銭湯などがあり、日本の日常の風景を味わうことができます。金子さんは、海外からの宿泊客を連れて近所の寿司屋で食事をしたり、まちのお祭りで、イギリス人宿泊客が神輿の担ぎ手として参加させてもらったりもしました。泊まる場所は、シーナと一平だけではない。「Town Stay in Sheena」すなわち、「まちに泊まる」をカタチにすることで、金子さんは “グローバル”と“ローカル”との間に立つことを目指しています。

訪れる人の名前を覚え、できる限り足を運び、挨拶や礼儀を大切にしながら、“まち” と“ひと”に頼ることで、日常に生まれるドラマチックな光景を楽しんでいるという金子さん。—「『Global×Local=Love』。これに尽きる。僕はシーナと一平に訪れる方、皆さんを本気で愛しています」と結びました。

シーナと一平でのドラマチックな日常の1コマを《椎名町お宿の番頭徒然日記》でのぞいてみてくださいね。



会場となった《GLOCAL CAFE IKEBUKURO》は、「国や地域を越えて、人と人がつながる場所」として、2018年3月にオープンしたばかり。後半のパーティーには、カラダに優しいこだわりの食材を使ったお料理が並べられました。

文/写真:後藤 菜穂



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