ある晴れた日曜日、雑司が谷駅3番出口が面する商店街の軒先に、ちいさなお店がならびました。それぞれのお店にはめじるしの赤い旗が風にはためいています。
珈琲スタンド、お弁当やさん、パンやさん、器や雑貨のお店、外国の可愛いものを集めたお店もあります。生演奏のライブや、タロット占いなど、買い物以外にも楽しいことたくさん。
こんな軒先市を主催しているのは、雑司が谷でアクセサリーのお店を営む一人の女性。
今回はときどき市主宰の眞砂絵里子さんに、ときどき市のウラ話を聞いてきました。

某珈琲店にて

いつもの珈琲店に私はあるチラシを持ってきていた。ハガキサイズのそれには「ぞうしがや ときどき市」と書かれている。去年から私も手伝いをしている軒先市のおしらせだ。
春と秋に大きく開催していて、今回は春、4月15日の日曜日に行われるのだが、今回はより雑司が谷に縁の深い方の出店が増えて、かなり面白いことになっている。
常連出店者の雑司が谷在住のハンドメイド雑貨の作家さんをはじめ、雑司が谷にお店があるタロット占いの占い師さん(『JUNGLE BOOKS』)は出張占いをしてくれるし、雑司が谷在住で池袋の有名どら焼き屋さんの『すずめや』さんの奥さんは、ゴスペルで培った歌で仲間とライブをしてくれる。
また、雑司が谷在住で東池袋で人気のカフェを営む『KAKULULU』のご店主は、人気メニューのムケッカの屋台を出してくれるし、ご近所要町からは古民家カフェ『アホウドリ』さんのお弁当やアクセサリー作家さんやお菓子のお店もきてくれる。 さらに楽しみなのは、去年目白から移転してしまったパン屋さん『かいじゅう屋』さんの参加が決まり、1日だけ帰ってくることになったこと!雑司が谷にもファンが多いパン屋さんなので、皆さんの喜ぶ顔が目に浮かぶ…。

こんな楽しい軒先市を主催しているのは、ある一人の女性、アクセサリー作家の眞砂絵里子さんだ。雑司が谷に暮らし、雑司が谷で店を営む彼女がどうしてこの軒先市を主催し、続けているのか。今回はそのウラ話を聞くことにした。


ただおしゃれな市じゃなくて、どちらかというとヘンテコな市にしたかった

ー「ときどき市は最初はこんなに大きくやるつもりもなくて、自分の店の軒先に自分が素敵だなと思う作家さんやお店を呼んで、いつものお客さんにちょっと楽しんでもらったり、それをきっかけに雑司が谷まで足を運んでくれる方が増えたらいいなあくらいのはじまりだったんです」

眞砂さんのお店『eclectic(エクレクティク)』は千登世橋のたもとにあり、この場所は東目白振興会という商店街に属している。 軒先を提供してくれるのはほとんどがこの商店街のお店だ。

ー「こんな感じで市をやるんですがもしよければご一緒にいかがですかと商店街の方に声をかけたら、ありがたいことに皆さんが協力してくださって。軒先を貸してくださったり、参加してその日だけ特別セールや特別メニューをやってくださるお店があったり、皆さんの力で最初に思い描いていたものより充実した市になっていきました。
せっかくやるなら流行ってるおしゃれなマルシェじゃなくて、どちらかというとちょっとヘンテコなくらいな方がいいなと思ってやっています。あ、今出店してくださってる方がヘンテコという意味じゃないですよ!
例えば店主が集めてる趣味のものをその時だけ売るとか、店主が気に入っている作家さんを呼ぶとか、おしゃれさよりもお店やまちの個性が出るほうを大事にしたいなと思っています。 だからまちの人が出店してくださるようになってきて、ほんとうに嬉しいんです」


まちで暮らす人が出店者に

過去2回にくらべて、今回は地元からの出店がかなり増えた。そのウラには一体どんな理由があるのだろうか。
ー「何か特別なことをしたわけではないんです。
開催する度にアイデアも湧いてきますし、先ほどもお話ししたように、せっかくやるならお店やまちの個性を大切にしたいなと思っていて。そうした中で雑司が谷に縁のある方で「あの人に出てもらえたらいいなあ」と思っていた方に少しずつ声をかけさせていただいたら、ありがたいことに今回出店してもらえることになりました」


当日の準備や運営スタッフは近所の主婦やお店のお客さんがお手伝いしてくださるそう。商店街や町会という組織を超えた、眞砂さんの人柄がつなぐ地元の輪がときどき市を支えている。


準備は大変。お店のことより時間をつかっていることも…

ひとりでお店を切盛りしながらイベントの準備をするのは本当に大変。
それでも眞砂さんがこの市を続けるのはなぜなのだろう。

ー「今回は『KAKULULU』さんがムケッカを提供してくれるので、保健所の許可をとりに行ったんですが、こんなことやるの初めてで「本当に許可がおりるかな」とドキドキしながらの準備でした。いろんな書類を準備したり、豊島区に後援をもらう手続きをしたり、毎回なにかしら山場がありますね(笑)
でも、一回やるごとに確実にレベルアップはしていて、最初はチラシと当日マップを作ることに追われたり、当日の机の準備や設営でバタバタしてしまったりしていましたが、今はだいぶスムーズに進めるようになっています。そうすると少しできた余裕で何かにチャレンジしたくなるんですよね。今回は飲食の提供を可能にするのがチャレンジでした。
時には本業よりも頭を悩ませたり時間を使ってしまっているんですが、ときどき市をやることで戻ってくるものも大きいです。単純に喜ばれると嬉しいというのがまずは第一にありますが、ときどき市を通して新しくご近所同士のつながりが出来たりするのもとても嬉しい気持ちになります。普段基本的にひとりでお店を営業しているので、いろんな人と関わって一緒に準備するのも楽しいのかもしれませんね。

あとは、案外ちゃんと本業にプラスになってたりします。実はそこって結構大事な部分なんですよね。やっぱり私も商売人ですし、マイナスになることばかりでは続けていけないなと思います。
準備は大変ですけど、それ以上に開催してよかったと思えるので、またがんばれるんでしょうね」


ときどき市の魅力は?まちの人の隠し芸大会?!

今回、どうしてときどき市に出店することを決めたのか、地元出店者の方に聞いてみた。
Sparrow Tailsというボーカルユニットでライブを行う『すずめや』さんのまゆみさんは、「毎日見下ろしたり、上でのんびりしたりしている千登世橋のたもとで歌えるなんて夢のよう!」と楽しみにしている様子。出店のお誘いをした時も二つ返事で快諾したそうだ。

ー「千登世橋という場所を特別だと思っていただけるのは、雑司が谷の方ならではだと思います。この場所に愛着をもってくださってるからこそ、こうして楽しんで参加してもらえるし、お客さんも「あの『すずめや』さんが歌うの?!」とびっくりというか、ワクワクして来てくれます。こういう反応は地元の方が出店者さんになってくれているからこそ起こる反応で面白いですね。隠し芸大会じゃないんですが、まちの人の意外な特技がときどき市で発揮されていく展開もなんだか面白そうだなと思います」

初回から参加しているハンドメイド雑貨の作家、『キノムクヤ』さんは、「のんびりとした雰囲気だったので、居心地が良さそうだなと思って出店することにしました。実際に出てみて、他の出店者さんも気さくに話してくださる方々で楽しかったです」と市の雰囲気を気に入っている様子。

ー「『キノムクヤ』さんも最初は「キアズマ珈琲の常連の主婦の方で雑貨を作っている人がいるよ」と教えてもらって声をかけさせていただきました。『キノムクヤ』さんはネットショップでの販売とアートギャラリーなどでの販売だけで実店舗はありません。なのでときどき市でご紹介できるのはとても嬉しかったです。雑司が谷の猫をモデルにした猫のピンバッチがあったりして。こんな素敵な作家さんが住んでいるんだというのをまちの人に知ってもらうことで、雑司が谷のまちをより素敵に感じてもらえるんじゃないかと思っています。のんびり楽しんでいただけているようでホッとしました」

東池袋でカフェを営む『KAKULULU』の高橋さんは、今回の出店の理由を「雑司が谷は最近身近なまちだし、今回の出店場所が凄く縁を感じる場所なので」と語る。場所に縁を感じたからという理由は、眞砂さんが目指しているときどき市にとてもふさわしいように思う。

ー「高橋さんとは店主仲間で仲良くさせていただいています。以前、近所で店をやっている店主たちが出店者となるフリーマーケットを『KAKULULU』さんで行ったことがあって、ときどき市はなんとなくその延長線上にあるような気がしています。そのとき高橋さんはCDを売っていて、そのラインナップにも人柄やこだわりがでていて面白かったです。今回はムケッカですけど、CDもまたやって欲しいな。そういう普段見られない部分が垣間見えるのってお客さんとしても嬉しいですよね」


世話好きだからこそ作れる心地よさ

ときどき市が面白い市になってきたのは、眞砂さんが全てを決めているところにあると思う。もちろん運営スタッフや出店者の声に耳を傾けながら、それでもときどき市の全てを眞砂さんが決定し指揮をとっている。自分で決めて自分で責任を負うからこそ、新しいチャレンジもやり遂げるし、冒険もできる。そして自分のことを世話好きと評する彼女は、出店者、スタッフ、軒先を貸してくれる人、ご近所の方など、全方位へのケアを忘れない。だからこそ、居心地の良い雰囲気での市になるし、協力する人も現れる。
また、アクセサリー作家である彼女のセンスの良さは周りも認めるところであり、彼女が良いと思ったものが集まっているときどき市はどのお店も魅力的なお店ばかりだ。

ぜひ彼女がまちの人と作り上げつつある心地よい軒先市をみに来て欲しい。年に2回のときどき市、春の開催は4月15日の日曜日。お散歩日和になることを祈って。