スタイルは決めずに、自由に使ってもらいたい

この春にオープンしたばかりの「シネマハウス大塚」は、「映画館」ではありません。もちろん「映画」の上映ができる設備も整っているそうですが、どんな方にも自由に使ってほしいといいます。

ー「名前から映画館かと思われるかもしれませんが、たくさんの人が集まれる、映画の上映“も”できるような多目的ホールなんです」(スーパーバイザー・橋本佳子さん)

ー「椅子は56席あって、後ろの人でもスクリーンが見やすいように、列ごとに座高を変えた仕様になっています。床に段差をつけずに椅子の高さで調整したのには理由があって、椅子を片付けることも可能で空間全体も利用できるようにしたかったんです。使い方の幅を広げたくて。
自慢の音響設備はプロ仕様。最高の環境が自慢で、防音もバッチリなんですよ。アコースティックギターのコンサートに利用いただいたのですが、とてもよい空間と太鼓判もいただきました。また、他に詩吟の会の練習会や、写真展のギャラリーなど、オープンして間もないですが、すでに多くの方々にご自由にご利用いただいています」
(代表・堀越一哉さん)

50年経った“現在”だからできること

運営しているのは、1968年に同じ高校時代を過ごした仲間たち。青春時代は、映画や芝居に明け暮れた日々だったそうです。その後、映像の仕事に進んだり、まったく別の道に進んだりしながらも、たびたび顔はあわせていた皆さん。
そして3年ほど前から「みんなで何かしたいね」と話すようになり、実現したのがここ「シネマハウス大塚」です。

ー「私は大塚生まれ大塚育ち。そしてみんなにとっても大塚は青春時代を過ごした場所なんです。何かやるなら大塚で、と話しました。かつて大塚には映画館が2つもあったんです。それが今ではゼロ。寂しいね、と話していたんですよね。それならば、自分たちで映画館のようなものを作れたいいねと」(メンバー・橋本和夫さん)

ー「具体的に話になったのは3年前のお正月。みんなで話し合って、“まちのなかにある自由に発表できる場所”というのが決まったんです。年齢を重ねてから新しいことに挑戦したこの場所が、若い人や地元の人にも気軽に使ってもらえるような場所になるといいなと思っています。そういう意味でも、使用料は手頃な設定になってるんですよ」(館長・後藤和夫さん)

「最初はもちろん不安もありましたが、私は映像の仕事に長い間携わっていますので、これまでの知識や経験を生かして形にしていきました。でも振り返ると、“する”と決めてからオープンまでは大変なこともありました。私たちは、仕事は一緒にしたことないメンバーだったので、連絡一つ取り合うのにもぜんぜんスムーズにいかなくて。まずは古い携帯をスマートフォンに変えて、メールの使い方を教えることから(笑)」(橋本佳子さん)

可能性は無限。だれもが主役になれる場所づくり

スタートしたばかりでも、設立時の皆さんの思い通りに、様々な人に様々なかたちで利用されている「シネマハウス大塚」。それは、多くの方が待ち望んでいたスペースだったからなのでしょう。そしてこれからも、発表の場やワークショップのスペースとしてなど、表現したい多くの方に注目されていくはずです。皆さんにも今後の展望について伺いました。

ー「オープンまでの1月~3月は、お試し期間としていろいろな方に場所を使っていただいたんです。私はテレビの番組制作側にいましたから、視聴者の方に実際あうこともあまりなかったんですよね。でもこのような場所ができたおかげで、若い人や才能のあるインディーズの皆さんとも交流できたり、この年になって新しい友人ができたりと、驚きと刺激をもらう日々です。このように、年齢や立場も関係なく、様々な人が交わることのできるスポットに育ってくれるといいなと思っています」(後藤さん)

ー「スペース的には広いとは言えないのですが、このこじんまりとした感じが利用される皆さんの幅をひろげているように思います。防音や音響には本当にこだわったので、映像関係はもちろんですが、朗読などのイベントにもおすすめです」(橋本和夫さん)

ー「最近、童謡の催しやアニメ関係の皆さんからも相談が入ったんです。これまで関わってこなかったような、思いがけないところから問い合わせがあると嬉しいですね。今後、ここがどんな使われ方をしていくのか楽しみです。この場所をきっかけに、大塚に人が集まってきてくれるようになるといいなと思います」(堀越さん)

ー「先日、イベントで信濃の限界集落農家の野菜を、通り沿いのテラスで販売したのですが、通りすがりの近所の皆さんに大変好評で。そのことがきっかけとなり、今後もここが、地域と関わりのある場所を繋ぐ役割を担えたらと思うようにもなりました。豊島区は中国、ベトナムをはじめとしたアジア圏の方が多く暮らすまち。住んでいる人同士がお互いのことを知るきっかけづくりの、東アジアの文化や食を楽しめるイベントなどを企画できたらいいなと考えているところです。シネマハウス大塚が、まちを巻き込んで地域に溶け込んでいけたらいいですね」(橋本佳子さん)

経験してきたからこそ、歳を重ねて好きなことが実現できる。そんな素敵な先輩がたによる「シネマハウス大塚」。
ぜひ皆さんも、足を運んでみてください。

文:田口みきこ
写真:西野正将

シネマハウス大塚
http://chinemahouseotsuka.com