赤ちゃんとお母さんが気軽に遊びに来れるカフェを駒込に

飲食の仕事の経験が無かったため、スターバックスコーヒーでアルバイトをしながら、業界のノウハウや接客を学び、カフェ開業の下地づくりをした小島さん。—「赤ちゃんや子どもが騒いでも、窮屈な思いをせず、気軽においしいコーヒーを飲める場所が絶対に必要。それは、電車に乗って行く特別な場所ではなく、自宅から歩いて行ける範囲になくてはならない」と、駒込界隈で暮らす親子の居場所、hahacoに込めた思いを語りました。

子どもとの会話が中心となる育児中は、大人と話しをする機会がグッと減ってしまうもの。しかし、あるお母さんからは、「hahacoにいると、他では話せないようなディープなことも話題にできるから、ストレス発散ができる」と言われました。hahacoの裏コンセプトは、「ママたちのスナック」。北区や文京区とも隣接する駒込という立地で、区を越えた情報共有ができることもhahacoの強みです。

他にも、「赤ちゃんと一緒に楽しむ」「体を整える」「学ぶ」がテーマのイベントを各種開催。お母さんが集まっておしゃべりを楽しみながら、体を動かせる教室が人気です。また、インターネットなどに氾濫する、信じてよいのかわからない育児情報ではなく、正確な情報を提供したいという思いで、赤ちゃんの眠りや、親子のコミュニケーション、教育資金の組み立て方など、専門家を招いて、お母さんたちの気持ちに寄り添いながら、学べる機会をつくっています。

2018年4月、小島さんは、自身が持つ保育士の資格を生かして「敷居の低い一時預かり事業」をスタートさせました。なかなか満たされない“子育て支援”の分野に、民間として、個人事業の規模だからこそできる細やかな手当てをしてあげたいと考えています。また、マーケティングの経験をもとに、意欲的にやりたいことがあるお母さんたちのプチ起業のお手伝いをすることも計画中です。2018年6月には5周年を迎えるhahaco。今後、小島さんは母だけではない、父の居場所としての展開も考えているそうです。


地域とビジネスの間で。ストック活用で拓く未来。

その防災訓練の縁で、消防団にもスカウトされます。五藤さんの地域との関わりはどんどん深まり、町会、祭りに加えて消防団としての活動も盛りだくさん。今では、ホースを担ぎ、防火服を着て現場に赴くことも。ポンプ車を操作する免許を取得し、高い出勤率で表彰もされました。また、巣鴨太鼓組鼓友のメンバーとなり、他の町会の若い人たちと東南囃子(仮称)を結成し、子どもたちにお囃子の良さを伝えようと奔走しています。さらには、大正大学地域構想研究所からの依頼で、都心と地方の循環を作るプロジェクトに客員研究員として参画。地域活動を通じて得られた経験を、研究成果として論文にまとめました。

地域との関わりができるまでは、ビジネスの成長の鍵は、ロジックと優秀な人材、そして最新情報をキャッチすることだと考えていた五藤さん。しかし、日々ネット上でオープンになる情報を先読みすることの難しさを感じていた当時を振り返り、—「ビジネス一辺倒だった頃には考えもしなかったことを、地域活動がきっかけでやれるようになった」と力を込めます。地域活動を通じて、自分が思いつくことのない考え方やアプローチをしかける人たちが身近に大勢いることに気づきます。やがて、地域の中でビジネスの相談もするようになった五藤さんは、様々なアイデアの“化学反応”が起こり、カタチになっていくことを実感しています。

五藤さんは、ムーブネクストで手がけるクラウドサービス事業をさらに発展させながら、地域活動を通して広げた知見で、「ワーク・ライフキャリア支援」「妊娠・出産・育児期の母子包括支援サービス」「地域包括ケア(医療福祉)支援事業」の構築を進めています。地域とビジネスとの間に立ち、様々なマッチングを実現してきた五藤さん。その経験を活かして—「数時間でも仕事をしたい育児期の女性や、定年退職後でもまだまだ元気な年配の方など、それぞれの能力を活かせるよう、オンラインでも地域コミュニティでもマッチングしたい」とのこと。五藤さんによる眠れる“ストック”の開拓が広がります。


駒込発。”日本一のQualityの高い店”を目指すスーパーマーケットの新たな挑戦

社員教育の一環としてオーナーがスタートした取り組みは、やがて経営マインドを学びたい人へと対象を広げ、取引先企業の後継者、幹部候補社員や一般学生を募集する《NPO法人 流通農業大学》へと発展しました。オリジナリティに富むカリキュラムは、農業体験、イタリアンのシェフによる料理教室、車椅子バスケット体験、オペラ歌手による講義など、流通理論はもちろんのこと、—「様々な見識を広げ、人間力を養うことができるのが、この講義の特徴」と梅村さん。また、実際の商品企画と店頭販売を行うインターンシップも行い、流通業における人材不足へのテコ入れを図っています。

不動産関連事業の一環では、2018年5月、駒込3丁目にシェアハウスをオープンするサカガミグループ。著名な建築家にデザインを依頼し、入居条件は性別、国籍を問わない(年齢制限あり)ことが—「オーナーの坂上さんらしさが出ている」と梅村さんは言います。

地域とのつながりを大切にするサカガミグループに携わり、駒込の魅力にも気づいた梅村さんは、最近、駒込を楽しむFacebookグループに参加し、駒込を堪能しているのだとか。梅村さんは、安岡正篤の“縁尋機妙”(えんじんきみょう)、“多逢聖因”(たほうしょういん)という言葉が好きです。「人間はできるだけいい機会、いい場所、いい人、いい書物に会うことを考えなければならない」と説いており、—「いただいたご縁で、私自身も成長させてもらっている」と梅村さんは言います。

人と人の心が通うことを大切にするサカガミグループ。クオリティの高いものを、いかにして消費者へ届けるか。 “食”から広がる縁を大切に、教育と研究を重ねながら、未来を見据えたサカガミグループと梅村さんの取り組みが続きます。


AIやIoTを活用した問題解決の力をもっと産業・教育の分野に

様々な取り組みの中でも大杉さんが着目するは《スマートメーターと人工知能を用いた再配送の削減》。世間でも話題となった、宅配便の再配達がかさみ、配達者は疲弊し、利用者は再配達依頼などの手間がかかり、甚大な社会的損失を生んでいるというもの。そこで、大杉さんたちが目をつけたのは、一軒ごとに設置された、使用電力を計測するスマートメーター。これを活用して、プライバシーを守りながら在宅かどうかを判別し、「在宅中の家だけを回る配達ルートを提示する」というシステムを構築しました。不在配送の9割削減が証明され、コンピューターサイエンスのトップカンファレンス(世界的権威の国際会議)で採択。今後、高齢化や過疎化が問題になっている地域での活用も期待されています。

他にもコンピューターの力で社会課題を解決するプロジェクトは様々。大杉さんが所属する《越塚研究室(旧坂村・越塚研究室)》の医療・福祉分野の取り組みでは、路上の点字ブロックに埋め込んだコンピューターのチップと、視覚障害者が使う白杖との接触を利用した通信システムや、車椅子やベビーカーでの移動がスムーズにできるマップのシステムが研究開発され、その後、民間でサービス化されています。また、救急車と病院とをリアルタイムでつなぐ救急医療支援システム、災害などの多数傷病者発生時における治療優先度の決定・選別を迅速に行うためのトリアージ支援システムなどを開発。大杉さんは、—「テクノロジーは適正に使うことで、様々な問題を解決に導くことができる」と話します。

今後、社会に貢献できるシステムを構築するためには、“教育”に力を入れるべきだと、大杉さんは考えています。しかし、世界的に見て、日本のコンピューターサイエンスの教育は、大きく遅れていることに強い危機も感じています。《NPO法人Teach For JAPAN》の立ち上げメンバーでもある大杉さんは、問題解決にいかにプログラミングを活かすかを、体系的に子どもたちに学んでもらいたいと考えています。

「AI、IoT、そしてプログラミング教育は、世の中の役に立つための“手段”であり、問題解決という“目的”を果たすためのものであり、手段と目的が逆になってはいけない。テクノロジーを使って、多くの人に解決する力を身につけて欲しい」と、強く願う大杉さんです。


建築家として挑む、都市木造や二拠点生活という未来へのテーマ

自身の故郷でもある島根県出雲市で十数年、地元の学生や市民が参加する、まちづくりワークショップに取り組んできた山代さん。ワークショップがきっかけとなり、出雲大社の参道にあった古い建造物を観光案内所として改修するなど、その取り組みを展開しました。企画から制作まで、地域住人参加型にすることで、まちとの関わり方や場の使い方を、多くの人に感じてもらえるように仕掛けました。

こうした中、山代さんが見出したのが、《NPO法人南房総リパブリック》で取り組む、“二地域居住”という暮らし方です。都市と地方をつなぐ試みで、観光でもなければ、移住でもない。「両方のまちに自分の拠点とコミュニティを持つ暮らし」の実現を目指しています。農業用のビニールハウスを活用したり、廃校をリフォームしたり、できるだけ大きな空間をつくり、様々な人を受け入れられるよう設計を考えています。休憩をする農家のお年寄りも、パソコンを開いて仕事をする人も、同じ空間にいられるような風景を、山代さんはつくろうとしています。

山代さんのこうした取り組みで、活躍するのが木材です。レーザーカッターを使い、専門の職人ではない人にも扱いやすい木材を、積極的に取り入れています。建築家として、木造建築の可能性を導き出し、耐震性、耐火性に優れた建築を手がけ、素材や構法の研究開発にも携わっています。山代さんがこれから取り組みたいことは、木の工業化とプレファブ化。木製の大きな箱を組み立てて建物を造る手法は、建設現場を選ばず、より様々な人が建築に関わることができ、職人不足の問題の解消にもつながると山代さんは考えています。

もう1つ、山代さんが、まちづくりや各地域での拠点づくりを手がける中で出会ったのは、大型木造産業建築物です。古くなった元工場や倉庫など、地域の核になる施設として保存・活用にも力を入れている山代さん。—「木を使うことは、林業を守ることになり、引いては、山が荒れて災害が起きやすくなることを防ぐことへとつながる」と、訴えます。林業と木造建築の新しい取り組みは、同時多発的に世界中で起きているのだとか。—「日本の木だけしか使わないというのではなく、世界に開いた林業として、日本古来の木の魅力を世界に伝えたい」と、山代さんは言います。



今回会場となった、《勝林寺》の本堂は、著名な建築家の設計で、伝統的な木組みの工法によって、2016年にリニューアル。隙間から陽光が差し込む幻想的な空間で、穏やかな時間が流れました。

文/写真:後藤 菜穂



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