“子どもの孤立”を解決するために生まれたコミュニティユースワーカーというしごと

学習支援だけではカバーできない子どもの存在に気づき、それぞれの状況に合わせた個別支援も始めた荒井さん。一般企業に勤めながら、子どもたちと社会との接点をつくり、時には一緒に旅行するなど、兄弟のような関係を育みました。しかし、親や学校、周囲の人との信頼関係が希薄な子どもは、せっかく社会とつながっても、人間関係のもつれなどが生じた途端に逆戻りしてしまうことも。そうした数々の事例を見た荒井さんは、長期で支援する仕組みづくりを決意。2016年、PIECES設立と共に、子どもに寄り添う支援者「コミュニティユースワーカー」(以下、CYW)の育成に乗り出しました。

―「孤立した子どもには、生きていたい!頑張ろう!と思える『自立の意欲』を取り戻してもらうことが大切」と荒井さん。PIECESが掲げる自立のステップは、特定の人を信頼することから始めます。CYWはその特定の人となり、子どもが居場所を得てそこに定着し、社会とつながるまで丁寧に寄り添う役目を担います。今では育成のための研修の依頼が全国から寄せられているそうです。

PIECESは、行政からの要請を受け、不登校の子どもの家庭訪問や豊島区の中高生センター『ジャンプ東池袋』への定期的な訪問、古民家を拠点にした10代のシングルマザーの支援活動なども行なっています。困っていても頼る人がいない、支援の情報が届かないといった子どもを訪問して支援を広げる中、ゲーム制作会社の協力で子どもが興味を抱きやすいゲームの制作体験イベントを開くなど、様々な分野の知見を活かした連携も生まれています。

あらゆる環境下の子どもを救い出す過程で遭遇した様々な修羅場とも言えるエピソードを爽やかに語る荒井さん。―「支援する側とされる側という関係になると苦しくなる。そうではなく、一緒になって趣味やスポーツを楽しむことで築ける関係性を大事にしたい」と力を込めます。多様な大人と子どもたちをつなぐ活動も、今後大いに広げたいとのことです。


小劇場と演劇の魅力、演劇的にみた池袋のまちのポテンシャル

「カンゲキを遊ぼう」をキャッチフレーズに、雑誌やウェブで演劇の深掘り情報を伝えるほか、BITE編集部の出張による「演劇を話す」イベントを開催。豊島区上池袋にある《くすのき荘》で定期開催し、演劇を作る人と観る人とが一緒になって演劇を語り合う企画で、その名も『BITEキャラバン』。演劇に興味があれば誰でも参加OKなのだとか。舞台の告知をしたいアーティストから情報を集め、一方で、もっと演劇を知りたい、何を観たらいいかわからないと集まった人々にそれぞれの趣向を聞きながらオススメの演劇を紹介する――いわばコンシェルジュのような役どころの園田さん。

その園田さんが「今、東京で一番おもしろい演劇が集まる場所」として勧めるのが池袋です。あうるすぽっとや東京芸術劇場といった公共の劇場と、サンシャイン劇場やシアターグリーンなどの民間の劇場とがしのぎを削る池袋。―「豊島区が文化・芸術に力を入れていることも大きな強み。いいアーティストを呼んでいい企画がたくさん生まれている」と園田さんは言います。東京芸術祭をはじめとする数々の舞台芸術の事業が目白押しで、その盛り上がりに、演劇好きも大きな期待を寄せているのだそうです。

「池袋×演劇」でもうひとつのオススメは、小劇場がたくさん集まっていることだと園田さん。―「ここ20年ほどで大きく進化した演劇において、今までにないイメージの舞台や新しい才能との出合いを秘めているのが小劇場。何よりその醍醐味は小さな空間で役者の熱量がダイレクトに伝わる“空間体験の共有”」だと言います。BITEキャラバンの会場にくすのき荘を選んだのも、こうした演劇の土壌が池袋にあったからなのだとか。演劇に触れる機会にあふれた池袋で何を観るか迷ったら、BITEキャラバンに足を運んでみては? 次回の開催は3月12日(火)より隔週開催となるそうです。


デザインは地域の中でもっと活躍する

防災グッズの企画を知人の豊島区職員に提案したところ、とんとん拍子で行政と連携したプロジェクト《ツクモル》が立ち上がりました。当時六本木にオフィスを構えていた梶浦さんですが、みるみる豊島区に知人が増え、ついにはオフィスを東池袋に移転させることに。2018年春の移転を前後して様々な事業にも携わりました。児童遊園のトイレをカラフルな絵画でラッピングする『アートトイレプロジェクト』、豊島区とルミネの協定による、ベビーカーや車椅子の人への優先をイラストで促す『優先エレベーターラッピング』を手がけています。

行政とのアート事業が活発になる中、地域の仕事の依頼も舞い込んできます。ひとつは東池袋で開かれる日の出マーケットの運営。新旧の住民がつながるきっかけとなる地域のお祭りを、地元の人たちとつくりました。さらには大塚の魅力を発信するローカルメディア『大塚新聞』の取材&記事制作という仕事も加わりました。そこで、梶浦さんはある問いを立てます。―「これらは我々デザイン事務所がする仕事なのか。そもそもデザインとは何か……」

この問いにより、デザインには広義と狭義の2つの意味があることを改めて認識した梶浦さん。一般的にデザイナーの仕事は、クライアントが企画や設計したものにデザインを施すことを言い、狭義におけるデザインを指します。これに対して広義におけるデザインは、目的を達成させるための設計を意味します。つまり、「地域の仕事=広義のデザインと狭義のデザインの両方を行うこと」となるのだそうです。

―「地域のあらゆる問題解決のために解決方法を設計(デザイン)して、それにカタチを与える(デザインする)。こうした一連を担うことが実は解決への近道にもなっている。『デザイン』は地域でもっと活躍できるはず」と梶浦さんは説きます。豊島区には六本木では得られない “おしゃれ”が潜在しているとのこと。デザイナーの皆さんによる豊島区の魅力発信、今後がますます楽しみです。


東北支援チャリティ上映会も4年目。難病発症も経験して感じた気づきと変化。

佐藤さんはすぐさま撮影した我妻和樹監督に、上映の協力をしたいと打診。2016年3月11日、豊島区との共催で東北支援チャリティ上映会を開催しました。―「映像を観ながら自然とその世界に浸れて、観る人それぞれの気持ちをつくるのが映画の力。きっと誰かの明日の行動につながるはず」と佐藤さんは言います。「実は震災後の波伝谷(はでんや)も撮り続けている」という監督の言葉に、「必ずや上映するから映画化してほしい」と約束し、翌年、佐藤さんにとって初プロデュースとなる映画『願いと揺らぎ』の上映が実現しました。

時を同じくして、佐藤さんは筋萎縮性側索硬化症(身体を動かすのに必要な筋肉が痩せて力がなくなる進行性の難病=ALS)を発症しました。―「症状の進行と共に、自分の役割が緩やかに排除されていく。そんな状況下で、我妻監督ただひとりが映画のプロデューサーとしての私に頼みごとをしてきてくれた」。進行する病と向き合い、一週間先のことも考えたくない中、上映会だけはやろうと佐藤さんは奮い立ちました。

2019年3月7日にはドキュメンタリー映画《架け橋 きこえなかった3.11》のチャリティー上映会も開催します。聴覚障害者が震災時に味わった様々な困難を、同じ障害のある今村彩子監督が描き、「命を守る情報に格差があってはならない」と訴える、2013年に制作された本作。佐藤さんは様々な人の体験とその時の思いを、映像を通して多くの人に感じてもらいたいと願っています。

―「『共生社会』などと唱えるのもいいが、そうした大きな言葉でくくってしまうと、一人ひとり違うはずの気持ちが見えなくなってしまう。そうではなく、誰かの思っていること、誰かが生きてきたことに少しでも迫っていきたい」。この何年かを振り返り、それ以前は目をつぶって生きていたのではないかと思うほどに多くの気づきがあったという佐藤さん。その言葉一つひとつが胸を突くスピーチでした。


2018年5月以来、シーズン3として8ヶ月ぶりの再開となった今回。待ちわびていた人も多く、あっという間にチケットは完売しました。また、今回会場となった《日の出ファクトリー》は、2月末日をもって一旦その拠点を閉じ、新たな移転先を探すことになっています。多くのプレイヤーが集ったこの場所で、2019年の幕開け、そしてとしま会議の再スタートと、様々な“はじまり”を予感しながら、大いに盛り上がった回となりました。

文/写真:後藤 菜穂



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