“小さなお店ではじめたコーヒー豆とお客さんとの新しい関係づくり

以前は会社員だった山谷さん。勤めていた会社では、商品企画などに携わっていました。当時から、出張する先々でコーヒー店を巡るほど、大のコーヒー好き。コーヒーは“豆”や“焼き方”によってオリジナリティを出しやすいと考え、コーヒー豆の販売で独立開業を決意しました。―「朝、自分でおいしいコーヒーを淹れられることが幸せ」という山谷さんの実感が、ひかるコーヒのコンセプトに反映されています。

―「新鮮な豆は味がいいのはもちろん、淹れた時にプクッと膨らむのが楽しい」と、新鮮な豆を提供することにこだわり、小ロットで販売しています。毎日気兼ねなく飲める価格に設定し、メニューもシンプルなものにしました。あえてカフェスペースを作らず、試飲してもらいながら来店客と一緒に好みの味を探すのが、ひかるコーヒのスタイルです。

山谷さんが前職で赴任した香川や広島の人脈を生かして、現地のイベントに出店したり、お店に出すパンやお菓子などを仕入れたりしています。また、近隣にオープンしたばかりのコマワリキッチン、そしてnest marcheにも出店しました。今後は、店舗営業とバランスを取りながらの出店を検討するそうです。

開店から5ヶ月が経ち、様々な課題が見えてきたと話す山谷さん。―「思っていた以上にお店が狭かった(笑)。あとはまだまだ認知度が低いので、どうやって知ってもらうか」。今後は、マーケット開拓、コーヒーの淹れ方教室やワークショップの開催も検討中なのだとか。お店の中だけにとどまらない、ひかるコーヒの展開が楽しみです。


子育てをチームで。いろいろな人が関わる子育てのあたらしい選択肢

「料理」を基軸に子育て家庭に特化したサービスを展開するエスキッチン。メインサービスとなる「お手伝いプラン」は、学校から帰宅した子どもと一緒に、食育サポーターが料理をして、家族のための食事を用意するというもの。―「料理をすることは自立の一歩。さらには、家族の中で役割を持つことで自信が育まれる」と城さん。何より、子どもが作った惣菜に涙を流して喜んでくれるお母さんの姿に手応えを感じています。

食育サポーターとしてエスキッチンを支えているのは、保育園勤務の経験を持つ管理栄養士・栄養士・調理師などの、“食”のプロたち。処遇改善が叫ばれる保育業界で大切な役割を担いながらも、なかなか光が当たらず、直接子どもと接する機会も少ないのだそうです。そんな女性たちにとっても、エスキッチンは新たな視点で取り組める副業となり、現在およそ50人もの食育サポーターが所属し、スキルを発揮しています。

城さん自身、食育サポーターが作る離乳食や惣菜を大いに活用しながらの子育て中です。―「子どもが作ってくれた人に『おいしい!』と目をキラキラさせて伝えるのを見て、笑顔で食卓を囲む価値を感じている」と言います。区のファミリーサポート、シルバー人材、大学生インターンなど、多様な人と子育てできることに感謝する城さん。将来は「ファミサポさん」をするのが夢だそうです。

―「『第三者を頼る』という一歩を踏み出したことで、全然違う景色が広がった。子どもにとっても、様々な人との関わりが大きな財産になるはず」と語る城さん。みんなで育てる文化を広めようと、このほど「両立チーム育児ラボ」を立ち上げました。復職を控えたお母さんたちが、それぞれの家族に合ったチーム育児にチャレンジするプロジェクトです。子どもを巡る様々な課題を解決する糸口にもなりそうで、大いに期待しています!


地域のギャラリーは、遊びと仕事の間で活かされる

親族の影響で、絵画や工芸作品に囲まれて育った油谷さん。ごく自然に美大に進学し、ターナー色彩に入社しました。アートに触れることが当たり前の日々を送ってきましたが、ふと、アートや美術が一般的に「わかりにくい」と評されて終わってしまうことに気づきます。一見無造作に描かれた絵画や、子どもが生活用品を使って制作したオブジェなど、その価値のあり方が、金額だけでは表しきれないことに着目しました。

―「美術、工芸、食べ物、場所、サービス、人……。全ての創作物は美しいものと考えたら、人が“つくって”、それに誰かが“ふれる”瞬間に価値があるのではないか」と提唱する油谷さん。もっと気軽にアートにふれてもらえるようにと、新たな貸し出しプランを打ち出しています。社内で営業職にも就く自身を「日本一絵具を売る男」と称するほど、ターナー色彩の市場は大きなもの。ならば、より安価にして、広く貸し出すこともできるのでは?と様々な企画を試みています。

こうした取り組みから、地域にも開かれるようになったTURNER GALLERY。開催されるイベントは実にユニークです。子どもから大人までがギャラリーの壁いっぱいに海を描く「長崎村の海びらき」、子どもだけで本物のまちさながらの仕組みをつくって体験する「こどものまちをつくろう」、回遊型アートイベント「まち中つながる展覧会」、ダンボールの建物や壁に好きなだけ絵を描く「巨大絵本&ダンボール恐竜をつくろう」などなど。―「様々なイベントを気軽にできる環境は整っているので、ぜひ使ってほしい」と油谷さんの力強いコメントがありました。

5月24日から6月1日の期間は、なんと、としま会議発の展示会を企画したのだとか。色とりどりの絵具の魅力と、個性あふれる展示会やワークショップ。TURNER GALLERYから目が離せません。


創業71年目の製麺所が挑む、まちにひらく新たな取り組み

そんな山口やの麺を一般の人向けに販売している「麺マルシェ」。毎月の開催で、スタートしてからこの春で6年目を迎えます。口コミで広がり、マルシェ当日は工場の前に多くの常連客が集まる名物のマルシェとなりました。若林さんは、―「同じことだけを続けていては時代の流れの中で生き残れるかわからない。何か新しいことをやってみようと思った」とマルシェを始めたきっかけを振り返ります。

悪天候になっても客足は途絶えず、買った人からは、すごくおいしかった、また食べたい、という感想と共に、煮卵や焼豚を盛り合わせた自作のラーメンの写真が送られてくることも。専門店への卸販売では得られなかった手応えを感じられるようになりました。―「お客さんの声に応えたくて、毎月欠かさず開催している」と若林さん。顧客のリアルな声は、新たな麺を開発する励みにもなっています。

麺マルシェをきっかけに、「ぶくろマルシェ」「nest marche」「シーナと一平のこしまど市」など、出張先が少しずつ広がっています。出張麺マルシェを行うようになって、池袋駅の西口側にとどまらず、東口側から訪れる人も増えたそうです。山口やの麺が食べられる界隈の店舗は、「都電テーブル雑司が谷店」、茗荷谷にある「花のれん」などで、それぞれこだわりのスープや盛り合わせで楽しむことができます。

山口やのまちにひらいた麺マルシェという取り組み。今では、遠方から電車で訪れる人がいたり、専門店のオーナーが友人に紹介してくれたりと、若林さんが予想していなかったところで少しずつ裾野が広がっています。―「小さな会社だけど、だからこそ多くの人の手を借りたことで今があると思う」と若林さん。麺マルシェの開催は、毎月第3もしくは第4土曜日。こだわりの専門店が発注する麺で、我が家オリジナルのラーメンを作ってみたくなりました。


今回の会場はなんと銭湯! リニューアルして間もない《妙法湯》で行われました。スクリーンを備え付けた脱衣所や、地域のアーティストの作品を展示するアートスペースなど、明るくモダンな空間が印象的。新しいスタイルの銭湯を満喫しました。
(注意:としま会議当日は許可を得て撮影しました。通常営業の際は、脱衣所・浴室内での撮影は禁止となります。)

文/写真:後藤 菜穂



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