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学校と地域の間。子どもをもっとみんなで育てる

豊島区教育委員会
関根 憲一さん(豊島区教育委員会指導課 指導主事)

旅行会社に勤務していたあるとき、恩師の勧めで一念発起し、教員へと転身した関根憲一さん。中学校の社会科教師として長年教壇に立ち、現在は教育委員会指導課に所属し、指導主事という立場で学校教育に携わっています。経験豊富なベテラン教員が不足する昨今、何かあれば現場に急行。若手教員に寄り添いながら、ありとあらゆる問題が起きる教育現場で課題解決に全力を注いでいます。

社会の多様化に比例するように様々なニーズが浮上する教育現場。それらに応えていく一助として関根さんが導き出したのは、地域の人の力を借りることでした。―「学校の先生にだってわからないことはある。だからこそ、みんなの力を借りなきゃいけない」と、学校という枠組みの外に目を向けます。

こうして地域の魅力ある人を求めていたる所に足を運び、実現した一つがとしま会議vol.38に登壇のカーン江夏未花さんによる授業でした。インドでの暮らしぶりをあるがままに語るカーン江夏さんの話は―「子どもたちにもきっと響くはず」と確信した関根さん。快く引き受けてくれたカーン江夏さんによる生き生きとした異文化体験談は教室を沸かせ、大きな手応えを感じました。

―「教育のプロである学校の先生だって、決して万能ではない。子どもたちに伝えられることに限りがあるのなら、あらゆる経験を積んでいる地域の人の力を借りたらいいんです」。それは、真剣に子どもたちと向き合い続けてきた関根さんからにじみ出る信条です。時には正解のない問題と向き合い、究極の選択を迫られることも少なくない教育現場ですが、―「それでもそれが子どもたちにとって本当に大事なものだったら、やればいいんですよ」と、その想いは徹底して子どもたちに注がれています。


めぐり逢ったあんフラワーの世界と駒込のお店

あんcafe 華水月
金森 麻希湖さん(華水月 代表、調理師)

2020年2月、路面店としては国内初となる「あんフラワーケーキ」の店《あんcafe華水月》が駒込駅前にオープンしました。“あんフラワー”とは、あんこをベースにしたクリームを、花の形に絞ったもの。オーナーの金森麻希湖さんがあんフラワーと出合ったのは、2年ほど前に何気なく参加したワークショップでした。―「練り切りのような和菓子と華やかな洋菓子と両方の魅力が詰まっていて、なんて素晴らしいんだろう。多くの人に知ってもらいたい!」と、その瞬間からお店を持つことをイメージしました。習って終わりにはせず、夢中になったあんフラワーの世界をとことん研究。レッスンを開講するまでに腕を磨いていきました。

以前は調理師としてイタリア料理店、日本料理店の厨房に立った経験を持つ金森さん。新たに手がけるあんフラワーは、グルテンフリーや天然素材にこだわるなど、見た目の美しさだけでなく、おいしさと安全性をも追求しました。さらに経営を学ぶため、南長崎のシェアキッチン「コマワリキッチン」の第1回起業塾にも参加。自身のあんフラワーの世界を少しずつ形づくっていきました。

そして、時を同じくして赴いたとしま会議vol.38では、金森さんにとって運命の出会いが……。登壇者の一人、カーン江夏未花さんと意気投合し、カーン江夏さんの経営する駒込のエステサロンAnkurを会場に、子ども向けあんフラワーづくりのワークショップを開催。子どもたちの豊かな色彩感覚から大きなヒントを得ました。それにとどまらず、カーン江夏さんから次々とつながった地域の人の縁は、あんフラワーケーキのレパートリーを広げ、お店づくりの礎となりました。

店舗探しなどに苦戦しながらもなんとか華水月のオープンにこぎつけたという金森さん。―「料理でもお菓子でも、『その食べ物が大好き!』という人が作った方が絶対おいしいんです」。そのポリシーのもと、お店のスタッフは、自身のレッスンの生徒さんに依頼しました。金森さんの情熱によって駒込のまちにもたらされたあんフラワーの世界。ケーキの購入はもちろん、難易度別のレッスンも受講できる華水月です。


若手音楽家たちと切り拓く、音楽業界の新しい世界

タクティカート
稲垣 悠一郎さん(株式会社タクティカート 代表取締役)

幼少期からバイオリンに親しんできたという稲垣悠一郎さん。大学で法律を学ぶかたわら、熱意ある若手演奏家を集め、アマチュアオーケストラを編成しました。しかし、とにかく大所帯のオーケストラのこと。コンサートホールや練習会場の確保、楽器の運搬など、かかる運営費はかなりのものです。なんとか持続させたいと思案した稲垣さんは、音楽業界の変革を求める仲間とともに、2019年1月、《株式会社タクティカート》を設立。クラシック音楽を中心としたコンサートやイベントの企画・制作、演奏活動の支援事業に取り組んでいます。

クラシックコンサートの醍醐味は、なんといっても繊細で豊かな音色と静寂さの調和。しかし、日本におけるクラシック音楽は、エンターテインメントとして決して一般化しているとは言えません。一人でも多くの人にコンサートホールへ足を運んでもらいたいと願う稲垣さんは、―「生活にクラシック音楽が浸透していないからではないか」とその要因を探ります。ホールまでに必要な動線は何か──。思案の末、「コンサート」ではなく「パーティー」と銘打った企画を打つことにしました。

その構想を最初に実現させた場は、巣鴨のRYOZAN PARK LOUNGEでした。「ラウンジパーティー」と銘打ち、アマチュアやプロを問わず、観客として、奏者として、自由に演奏に参加できるスタイルに。音大生やプロのストリートピアニストなどによるセッションから音楽の輪が広がり、集まった人々の言葉にならない喜びや温かさに満たされた会となりました。手応えを感じた稲垣さんは、―「参加した人たちの全員が表現者。これからも自己表現できる場をたくさん創りたい」と語ります。

タクティカートが掲げるビジョンは「若手演奏家が活躍する未来をつくる」です。音楽では食べていけないという前提を覆し、演奏家が活躍する場を創出すること、そして、まちなかに音楽を浸透させることの両輪で音楽業界を切り拓こうとする稲垣さん。その言葉は、どこまでも力強いものでした。―「共に表現し深く人間性でつながることのできる音楽には、コミュニティを形成する“強い力”があると、僕は信じています」


目白で挑む、都市型家庭医療のあたらしいモデル

町のクリニック目白
宮元 周作さん

体のどこかに不調を感じたとき、何科にかかればよいのかわからなくても、普段から気兼ねなく診てもらえる「まちのお医者さん」がいてくれたら頼もしいものです。年齢を重ねいくつもの疾患を抱えている人もいれば、生活スタイルや家族関係、困りごとや不調の感じ方は千差万別。豊島区高田に昨春開院した《町のクリニック目白》は、そうした一人一人の背景やニーズを大切にする「家庭医療」を実践しています。

このクリニックの院長が描く家庭医療像に共感し、その実現に向けて支援をする宮元周作さん。自身も内科医として様々な患者の診療に携わる中で、―「病気の治療には、患者を取り巻く環境や人生そのものを含めた医療サポートが必要なのではないか」という想いを強くしていきました。昨今、高い専門性が求められる医療現場では、診療科が細かく複雑に分類されています。そうした細分化とは一線を画す家庭医療。範囲を限らず診療する家庭医の姿勢は、宮元さんの信念と重なります。

“疾患”ではなくその“人”そのものを診る──。町のクリニック目白が描く家庭医のあり方は、専門領域として家庭医療のトレーニングを積んだ医師によって確立されています。宮元さんは、―「専門診療科の医師とは違う視点を持ちあわせているのが家庭医。結果として処方する薬は同じでも、治療におけるプロセスは全く違う」と言います。

一方で、高齢者の搬送が絶えない救急医療にも携わる宮元さん。超高齢社会で日々感じるのは“孤独”と“不安”の蔓延だといいます。―「クリニックの定義を『医療サービスを提供する場所』ではなく『人が尊厳を取り戻す場所』にしたい。どうあればその人が『俺は俺の足で生き切ったぞ』と思って人生を全うできるのか。それを一緒に考え、その人が選択することをそばで支える。そういう存在が主治医だと、僕は思います」


会場は、今回が2度目のとしま会議開催となるコワーキングスペース《RYOZAN PARK 大塚》。プリスクールに併設されたスペースに集まった参加者は仕事帰りという人も多く、束の間のゆったりとした雰囲気を味わっていました。

文/写真:後藤 菜穂



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