歩いて見て回ることが、まちづくりの第一歩

長い間、町会長としてまちづくりをされてきたとのことですが、これまでどんな取り組みをされてきたのでしょうか?

ー「平成13年に前任の会長が急逝されて、町会長に就きました。初めは会社勤めをしながらの兼務だったのですが、実際に町会長の仕事に携わってみると、片手間ではできないということが分かりました。町会長の仕事とは、安心して暮らせるようなまちづくりをすること。私は、お世話になったまちに貢献しよう、恩返ししようと、会社を退職。専任になったのが、平成16年です。」

就任後に最初に行ったのは、昼も夜も町内中をくまなく歩いて見て回ることでした。そして気づいたのは、掲示板が落ちたままになっている、街灯が切れっぱなし、駅と住宅地をつなぐ通路にもホームレスがいる、まちのなかは落書きだらけ……と、問題が山積みだということでした。なんとかしなくてはいけないと、隣の板橋区や新宿区、世田谷区も見て回り、安全で安心なまちづくりを研究しました。そして最初に手がけのは、池袋駅南口線路の高架下(通称ビックリガード)の落書きを消すことでした。
各関係機関に許可をとる協力を仰ぐなど、本当に一筋縄ではいかない仕事でしたが、この落書きをなくさない限りはまちの安心は得られないと思いましたので、多くの方の力を借りて進めました。最後は、すいどーばた美術学院の生徒さんに『雑司が谷いろはかるた』をモチーフに壁画を描いていただき完成。あんなに怖かったガード下が明るく、随分見違える風景になったんですよ」

(左)ビックリガード(昭和38年開通)の不気味な落書き
(右)『雑司が谷いろはかるた』壁画作業風景

ラジオ体操、ゴミ収集、お祭り。全ては顔の見えるまちづくりのため

足を使っての調査、そして実践することでまちづくりを行なってきた渡邉さん。その『雑司が谷いろはかるた』は、このたび新しく設置された「南池袋一丁目公園」のアートトイレにも引き継がれました。

(左)毎年行われている夏休みラジオ体操。看板は渡邊さんの手書き。
(右)イベントは、人と人とがつながるきっかけづくり。 写真提供:渡邉町会長

(右)アジサイ祭りの様子。
(左)隣の町からかけつける人たちも。 写真提供:渡邉町会長

ー「この公園は、夏には子どもたちが大勢集まるラジオ体操の場所として使っているので、トイレが綺麗に、そして賑やかになって嬉しいですね。町内の方だけでなく、たくさんの皆さんに来てもらいたいです。このラジオ体操、手作り看板を作ったり、参加賞を用意したりと、来てもらうためにいろんな工夫を凝らしているのですが、町内の皆さんとコミュニケーションを積極的にとっていきたいからでもあるんです。
都会は隣近所との関係が希薄とも言われますが、私は歩いていると毎日少なくても3〜4人には声をかけられるんですよ。人と人とが顔を合わせられる機会を作ってきましたし、数年間毎日続けた資源のリサイクル回収も大きいと思います。ゴミ問題を解決するために、自主的に行なってきたことなのですが、自分の健康のためにもなりますし、住民のみなさんとの交流の機会にもなったと思います。お勝手口から“こんにちは”と何気ない日常会話を楽しんだり、顔の見えるまちづくりができたと思います。年間で100t集めたこともあるんですよ! 綺麗になるし、町会費も潤い、住民の方にも喜ばれて続けたかったのですが、1人で続けるのには限界もあり、残念なから現在は後継者不足により行なっておりません」

よりよくなるなら、まちづくりは、人それぞれでいい

まちづくりの担い手は、なかなか見つからないものでしょうか。また、渡邉さんが町会長になって16年、環境を整えることからスタートし、新しい文化もつくるなど、まちの変化を一番実感してきたと思います。今後に期待することはなんでしょうか?

ー「この16年で、まちは随分変わりました。環境を整えたことで、うちの町内には犯罪は一切なくなりました。でも、同じように引き継いで欲しいとは思ってはいないのです。私は足で回るまちづくりを行なってきましたが、町会は会社ではないので、その人なりのやり方でいいと思うんですが、もうすこし、若い人たちが興味を持って、町会の運営にも参加してくれたら嬉しいとは思っています。そのためにじっと待っているのではなく、若い世代が住むマンションの敷地で行う新しいお祭りを企画するなど、世代を超えて関わるきっかけづくりはしています。そして、さらに広くこのまちに興味を抱いてもらいたいと平成23年より、まちづくりの一環としてつくった『雑司が谷 七福神』に加えて、新しく総檜造りの『池袋大仏』も登場したばかり。今は、この大仏さまを広く知ってもらえるようにと準備しているところです!」

渡邉隆男
昭和31年より南池袋在住。平成13年、南池袋一丁目町会長に就任し、16年間「安全・安心」のまちづくりを進めている。

インタビュー:宮田麻子(豊島区「わたしらしく、暮らせるまち。」推進室長)
文:田口みきこ
写真:西野正将